みんなちがってみんないい

IMPACTors ・椿泰我くんのことを話します。 

Nのために

湊かなえ著の「Nのために」を読みました。なぜ、こんな湊かなえの作品を読みたくなるのか自分でもわからない。


読書感想文(ネタバレ含)



登場人物中心に。



世間的に一番マトモな登場人物は、安藤くんなのかもしれないけれど、私は西崎さん以外の登場人物には誰にも共感できなかった。

安藤くんはとても誠実、というか真っ直ぐで言ってることは間違っていないけれど、とても真っ直ぐで暗い世界とは縁のない人な気がする。だからこそ、”マトモ”なのかな。成瀬くんは、どちらかというと”よくいる人”。無気力じゃないのに、見栄を張りたくて無気力に見せてる人かな。この2人は、よくいる人達なのかも。周りに。




個人的に怖かったのは、やっぱり杉下さんと、野口夫妻。西崎さんのお母さんも怖いし、杉下さんのお母さんも怖いけど、杉下さんの赤の他人(奈央子)をあそこまで憎める所に狂気を感じる。(奈央子の性格や過去のトラウマ故なのもあるんだろうけど)色んな意味で、彼女も”壊れて”しまってるんだと思う。私は彼女ほどの目に遭ったことはないからわからないのかもしれない。でも、そういう意味では、西崎さんも過去の事が原因で、色々とズレている部分はあれど、最後の最後に自分の見ている物が幻想だと認識している点や、咄嗟の判断で自ら罪を被る*1あたり、一番自分の過去と対峙して、乗り越えようとしていたのはなんだかんだ彼だったのではないかなと思った。それでいて、周りの人間の事まで考えてた彼が誰よりも、”N”のために生きていたような気がする。


事の発端は、野バラ荘と野原のおじいちゃんの為にって事でいいのかな。それなら、割とまあホッコリする話だと思うけど(人死んでるけど)でも白ゆき姫殺人事件のが、ミステリーとしてはハッとさせられる展開が多くて面白かったと思う。Nのためには、多分ドラマ化に便乗して色んな所である程度あらすじが……というか、タイトルと登場人物からなんとなく察せてしまう感じが残念だった。

湊かなえの作品はどれも暗くて、本当に暗いけど、読んでてどうしようもない気持ち……にはならないし、どこか登場人物に共感めいた感情を抱いてしまうのはなんでだろうなあ(笑)




*1:彼は奈央子を殺人犯にさせたくないという名目で罪を被ったけど、本当は杉下や安藤や成瀬くんを巻き込みたくなくて罪を被ったのではないかと思う